ブラインドタッチやタッチタイプは、見た目の「脅威的能力」と「習得の簡単さ」のギャップが大きすぎるのが、かなりのネック。

●見た目の「凄さ」の割に、習得にかかる時間があまりに短すぎるので「簡単なのだ」と信じてもらえない。

とにかく私が最初に声を大にして言いたいのが、「習得に時間がかかる」と思ってるから「ほんとうに時間がかかってしまう」んだよということなんですよ。つまり、

「時間がかかる」という「思いこみ」が問題なんだ

ということなんですね。そりゃね、「なかなか習得できないだろうなぁ」と思ってたら、ゲームタイプの練習ソフトのような、「時間のかかる方法」しか選ばなくなるんですよ。人間って生き物は。不思議なんですけども。

実際には、ブラインドタッチなんてゼロから習得しても、習得にせいぜい2時間〜3時間しかかからない技術なわけです。半日かからない。そのくらい簡単な技術です。
※先に書いた記事(「ブラインドタッチはとても難しい技術と勘違いされている」)参照

じゃ、その簡単な技術が、なぜ「簡単だ」と認識されないかというと、ブラインドタッチで文字を打っている人の姿が、はたから見ていると、とんでもない「魔術」のように見える、からなんですね。まったくキーボードを見てないのに、画面に文字がスルスルっと表れてくる。「ええええ? 何これ? 信じられない!」って思ってしまうんですね。で、それだけだったらいいんですけど、そのあとに「これは私には習得できないわ」とか思いこんでしまうわけですよ。この思いこみが問題なんですね。


●「できない」と思うから、ゲームを選ぶ。でも、ゲームはもともと「引き延ばし」構造が本質ですよ。

「これはできないわ」と思うと、おかしなもので、「できない練習の仕方」を選んでしまうんですね。人間は。だから「できないなぁ」とか、「難しいだろうな」とか「習得に時間がかかるだろうな」と思った人は、「ゲームタイプの練習ソフト」に走ってしまうわけですよ。困ったことに。

考えてみて欲しいのですが、ゲームというのは、もともと「時間つぶし」のためのエンタテインメントなんですよ。とくにパソコンなどで人気のゲームのほとんどは、ひたすら「結果を得るまでの引き延ばし構造」こそが本質なわけです。だから、ゲームにするためには、もともと「時間のかかる手法」を選ばないと、ゲームとして成立しなくなっちゃうんですよ。わかります?

もともと2〜3時間しかかからないものを、ゲームにするためには、「わざわざ時間引き延ばしをするための工夫」が必要になっちゃうんです。どうしても。これって本当は変でしょ?

だって、「技能の習得」という目的の事を考えたら、時間がかかる方法と、時間のかからない方法なら、そんなもの、圧倒的に

時間がかからない習得方法の方が良い!

に決まっているではないですか。ここに問題の本質があるわけです。

「何かの技能を習得するのに、ゲーム構造を使って覚えよう」という発想自体に、もともと失敗しやすいの要因が潜んでいるですね。特に、タイピング練習の場合は、もともと習得に時間がかからないだけに、この矛盾構造が、ものすごく大きな問題を引き起こしてしまいます。


●基礎から学ばないから、「悪癖」が身に付いて、結果的にずっと身に付かないままになる。

ゲームタイプの練習ソフトは、課題がアトランダムに出ますから、打ちやすいキーも、打ちにくいキーも同じように「課題」として出されてしまうわけです。極端な事言い方をするなら、足し算・引き算の問題と、因数分解が同時に出題されるようなものなわけです。そりゃ、どの単語を練習しても、なかなかうまく「解答」できませんよね? 当然です。

しかし、問題なのは、もっと重要な事でして、こんな「足し算引き算の四則演算と因数分解を一緒に解く」ような事をしてると、「難しいキーだけは、チラッとキーボードを見る」という、実に大問題な「悪癖」が身に付いてしまうんです。これが本当に大問題です。

ブラインドタッチというのは、本当に完全にキーボードを一切見ないからこそ、快適に文章作成に意識が集中して「快適」になるという技術なんですけど、この「チラッと見てしまう」という悪癖が身に付いてしまうと、これがもう本当に、「悪癖を取る」のがものすごく大変になってしまうんですね。

●本当の快適さを知らないから、「悪癖打ち」が普通になってブラインド打ちできなくなってしまう。

この「チラッと見る」クセがつくと、文字入力は、ものすごく不快な作業になってしまいます。ここのところは、実際にブラインドタッチができてる人でないと分からないと思うのですが、何が問題と言っても、この「快適さ」が阻害されることほど大きな問題はないんです。

このあたりは、いずれ書くつもりにしてる【「8割できてるからOK」と勘違いされている。】という記事に譲りますが、我流だと、とにかく不快なんです。で、そういう人は、本当にブラインドタッチが出来ている人と、入力に関する話で行き違いが起こります。どんな行き違いか? というと、

●入力スピードが劣る

という価値観です。
本当にブラインドタッチができてると、実は入力スピードは気になりません。入力スピードより、頭に浮かんだ文章をキチンと形に出来てるかどうか? とかに気持ちが行くからです。でも、我流でチラ見の悪癖が身に付いてしまった人は「思いついた言葉を、早く形にしてしまわないと、忘れる」ので、必死にスピードを上げようとするわけです。

でも、本当は、「チラ見」をしてるから、頭に浮かんだ文章を忘れてしまうんですよ。ずっと画面を見続けることができれば、そこに「すでに書いた文章」があるから、それに続く「頭の中にある文章」も忘れなくて済むんです。見ている事と考えている事が一致してるから。でも、「チラ見の悪癖」がついてしまってると、ついキーボードを見るから「何を書きたかったか」を忘れるんです。で、書きたい事を忘れるから、「早く打たなくちゃ」という悪循環に陥って「入力スピードが大事だ」になってしまうんですね。

本当はスピードを意識するより「遅くても良いから、完全に見ずに打つ」事をキチンと練習しないとダメなんです。「チラ見」がとにかくダメ。でも、結局、「習得に時間がかかる」と思いこんだ人は、いつのまにか「チラ見」のクセがついてしまって、そのせいで、いつまでたってもブラインドタッチの快適さに到達できず、ずっと「不快なまま」になりがちなんですね。本当はものすごく簡単で快適なのに。

このあたり、まだまだいろいろ書きたいのですが、また書きます。(2013.1.12)


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